小学生・中学生でも理解できる!著名人のSNS上の発言から知る経済のしくみ

こんにちは。フォルテの文系講師の上村です。今回は著名人のSNSでの発言から知る経済の簡単なしくみについてです。

3月に電気グルーヴのピエール瀧氏がコカイン使用による麻薬取締法違反の罪で逮捕・起訴されたというニュースがあり、それに関する話題がしばらく一般ニュースやワイドショーを賑わせていました(一部のワイドショーでは現在進行形ですかね?)。

そこでワイドショーでたびたび取り上げられたのが、電気グルーヴでピエール瀧氏の相棒である石野卓球氏のTwitterでの発言です。何というか、「石野卓球」や「電気グルーヴ」が普段どんな活動をしているのかを知っているかどうかで受け取られ方が180度変わるであろうツイートの数々ですが、他の著名人が決してしないようなその自由奔放な発言が石野卓球氏には何故できるのか?今回はここから見えるちょっと経済の話をしたいと思います。

 

何故、石野卓球氏はSNS上で自由な発言が可能なのか?

この問いに対して堅い解答をすると、「憲法21条で表現の自由が認められているから。」となりますが、今回はもちろんそういう意味での問いではありません。

Twitter、FacebookやInstagramといったSNSが普及し、今や著名人と一般人が良い意味でも悪い意味でも距離が近づいています。今回の件でも、石野卓球氏とは(おそらく)直接の面識のない一般人が次々と絡んでいっています。このような絡みに対して多くの著名人はスルーします。それに対して、石野卓球氏はこれらの一般人にガンガン反論していっています(その面では、石野卓球氏の良い人柄が滲み出ているように個人的には感じます。ピエール瀧氏への愛も感じます。そこでの言葉遣いや表現の是非はともかくとして。)。さらにそれ以外にも石野卓球氏のTwitter上での発言では過激な表現や卑猥な表現も多用されています。

これらは「石野卓球」というアーティストのパフォーマンスと言えばそれまでなのですが、それでもこのようにSNS上で自由な発言が出来る著名人は限られています。それは彼らのメインの活躍の場(主戦場)がテレビやラジオではないということです。

 

テレビやラジオの番組におけるお金の流れ

テレビやラジオはNHKを除く民放(日本テレビ・フジテレビ・TBSとか)の番組はそれを見ている・聴いている視聴者がお金を出すわけでなく、スポンサー企業(よく「この番組は〇〇〇の提供で~」とナレーションが入ったり、各番組中にCMが流れたりする会社ですね。)が番組に対して出すお金によって成立しています。そのスポンサー企業から出されたお金が番組の制作費や出演者の出演料(ギャラ)となります。つまりテレビ局およびラジオ局と、テレビやラジオを主戦場とする著名人はスポンサー企業から収入を得ているわけです。

なので、番組の内容や出演者の発言もそのスポンサー企業の顔色をうかがう内容になりがちです。例えば、ビール会社がスポンサー企業の番組内でワイン好きのタレントが「ビールよりもワインの方がおいしいから皆さん、ビールなんか飲まないでワインを飲みましょう!」なんて言えないわけです。ちなみに過去の事例を紹介します。2005年に「朝ズバッ!」という番組がありました。この番組の司会者である みのもんた氏 が番組内で「皆さん、ビオフェルミンなんてお飲みになっているじゃないですか。胃腸薬。だったらビール飲んだ方がいいくらい。」と発言しました。そして、こともあろうに当時「朝ズバッ!」のスポンサー企業がビオフェルミンを製造しているビオフェルミン製薬だったのです。つまり、番組にお金を出してくれているスポンサー企業の悪口を言ってしまったわけですね。みのもんた氏 はこういう歯に衣着せぬ物言いに定評があるタレントでしたが、流石にこの一件に関しては後日番組内で謝罪、ビオフェルミン製薬は「朝ズバッ!」のスポンサーから降板する事態に発展しました。それくらい番組にとってスポンサー企業は重要な存在なのです。

この点で番組出演者である著名人に求められるのは、上記のような気遣いは前提として、ずばり好感度です。世間一般からのイメージの良い著名人が出ている番組やCMはそれだけで話題になりやすく、視聴率が高くなりますから、スポンサー企業からすると自分たちのCMをより多くの人に見てもらえ、そこから商品やサービスの販売促進につながります。また、そのように視聴者に受けの良い番組を提供している(番組にお金を出している)だけで、企業としての好感度も上がるので、スポンサー企業側としては目先の利益には繋がらなくても、先々を見据えたときにはそれがプラスに働く可能性が高いので、やはりお金を出します。

このような経済的な構造があるので、テレビやラジオを主戦場としている著名人は、好感度が下がったり、あとは偏った政治的イメージがつくような発言を自然と控えます。実際に昔、番組内で「私は昔、集団万引きで店をつぶしたことがあります。」と衝撃の告白をした女性芸能人がいました。そしてもちろん、この女性タレントはその後活動自粛となりました。特に最近はコンプライアンス(=法律や社会のルールを守ること)やポリティカリーコレクトネス(=「差別をしない」といった政治的正しさ)が求められている時代なので、企業は以前にも増して番組内容や著名人の発言に敏感になっています。

 

好感度を気にする必要のない著名人

一方で、この枠に当てはまらないのが石野卓球氏を始めとするミュージシャンなどのアーティストや学者や作家などです。これらの人々の共通点は、テレビやラジオに出演することはあっても、決してそれがメインの活躍の場でないことです。言い換えると、テレビやラジオ以外にしっかりとした収入を得る手段を持っている人々です。ミュージシャンであれば、CDやライブのチケットを購入するファンの出すお金から収入を得ています。学者は自分の著書を購入する人や授業を受け持っている大学の出すお金から収入を得ています。作家は作品を連載する雑誌の出版社や自身の著書を購入する人の出すお金から収入を得ています。あとはホリエモンのように自身が経営者の場合もそうですね。つまり極端なことを言うと、全体からすると一部だが、確実に自分を支持してくれる(お金を出してくれる)層を持っていれば、その他大勢からの好感度を気にする必要がないわけです。また同様に主戦場がそもそも日本ではないという人も当然、この枠に当てはまらない人となります。

 

最後に、話題の動画

そして、このような枠に当てはまらない人の一人がお笑い芸人・キングコング西野こと西野亮廣氏です。元々はお笑い芸人なので、どう考えてもスポンサー企業の顔色をうかがう方のはずですが、その西野亮廣氏は現在、絵本作家として出版した『えんとつ町のプペル』が売り上げ37万部突破し映画化決定、またクラウドファウンディング(自分の企画の支持者に資金提供を募ること)で2億円以上の資金を調達、ビジネス書もベストセラーなど、多方面で才能を発揮している人です。つまり、自分自身に直接お金を出してくれる層を持っている人となったのです。私も独立前に彼のビジネス書を買って読んで良い影響を受けました。そして何よりこの記事自体が完全に彼のビジネス書の影響をモロに受けています(笑)

そんな西野亮廣氏が今年の3月に近畿大学の卒業式でゲストスピーカーとして行ったスピーチの動画を最後に紹介します。そうです、今回の記事を何のために書いたかというと、この動画を紹介したかったからなんです。動画は全体で16分ほどあります。その16分もあっという間なのですが、メインの話は12分くらいからなので、時間がない方は12:09からご覧ください。ただメインの話以外からも個人的には学ぶことの多い素晴らしいスピーチでした。

今回は以上です。ではまた。