こんにちは、フォルテの文系担当の上村です。
このシリーズでは、全小中学生にオススメの映画や小説などを紹介していきます。このシリーズで紹介するのは、私の考える「良い芸術作品」です。
ここでいう「良い芸術作品」とは、その作品に触れることで私たちが「何かしら成長できる」「何かを考えるきっかけを得られる」「何かしらを学べる」「モチベーションが高まる」作品を指しています。
優れた芸術作品(小説でも音楽でも絵画…etc)に触れることで私たちの人生は豊かになります。ここで紹介する良い芸術作品に触れることで少しでも子どもたちの人生が豊かになってくれればと思っています。
第五弾となる今回は、ホラー映画の『Us(アス)』です。
<参考記事>
第一弾:映画『ドリーム』(ココをクリック)
第二弾:映画『ズートピア』(ココをクリック)
第三弾:映画『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』(ココをクリック)
第四弾:映画『トイ・ストーリー4』(ココをクリック)
現在公開中の映画『アス(Us)』を見てきた。
現在公開中(と言いつつ、かなり多くの劇場が既に公開終了に…)の映画『アス(Us)』を桜木町のブルク13で先日観てきました。この作品、日本では9月6日に公開されたので、公開してから既に4週間近く経ってますが、個人的にはずっと前から観たかった作品でした。なぜかというと、この作品の監督である、ジョーダン・ピール監督の前作『ゲット・アウト』(2017年)が大大大大傑作だったからです。ジョーダン・ピール監督は初監督作にして、『ゲット・アウト』でアカデミー脚本賞を受賞し、一気に名を上げました。かく言う私も、『ゲット・アウト』を公開当時に劇場で観て、かなりヤラれたので、ジョーダン・ピール監督の次の作品も絶対に劇場で観ようと思っていました。
映画『アス(Us)』のあらすじ
アデレードは夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンと共に夏休みを過ごすため、幼少期に住んでいた、カリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れる。早速、友人たちと一緒にビーチへ行くが、不気味な偶然に見舞われたことで、過去の原因不明で未解決なトラウマがフラッシュバックする。やがて、家族の身に恐ろしいことがことが起こるという妄想を強めていくアデレード。その夜、家の前に自分たちとそっくりな”わたしたち”がやってくる・・・。
(公式ホームページより)
実際に見た感想
今回の『アス(Us)』、約半年前に公開されていたアメリカでは好評で、大手レビューサイトのRotten Tomatoesでは批評家の支持率が93%でした。そして、嫌でも期待が高まる中で鑑賞しましたが、やはり前評判通り、かなりの傑作でした。
この作品は、黒人一家の別荘に自分たちと全く同じような見た目の家族(劇中で”テザード”と呼ばれます。)が侵入してくる話で、いわゆる『ホーム・アローン』などに代表される“インベージョン物”と呼ばれる定型です。ただし、後半は話が拡大していき、最終的にはゾンビ映画に近い形になっていきます。実際に主人公の黒人一家は、自分たちと見た目がそっくりなテザードたちと、ゾンビ映画で生き残った人間とゾンビが戦うがごとく、必死に戦っていきます。これが中盤の見せ場になっているわけですが、いかにもホラー映画な画面が続く中でも、時折笑えるシーンが入り込んでおり、このバランス感覚が最高です。これは元々コメディアン出身であるジョーダン・ピール監督の作風と言えるでしょう。
そして、最後の展開。もちろん、ここではネタバレはしたくないので書きませんが、思わず「えっ、マジ?」というオチがあります。そして、そのオチから考えると、そこまでの間に数々の伏線と言える描写があり、すべてはそのオチに繋がっていたことに気づきます。そして、「あれ?もしかしたら、他にも見落としている伏線があるのでは?」と思い、二度、三度と見たくなる作品です。良い映画って大抵はそういうものですね。
また、個人的には見た後に何とも言えないモヤモヤする感覚が強くあったので、劇場パンフレットを買って読んだり、You Tubeでのレビュー動画をいくつも観たりして、モヤモヤを解消しました。こういう、自分が感じたモヤモヤは、その都度調べて解決することって勉強でも大事です。個人的な経験からすると、そういうのって後々になってまた必要になってきて、結局「あの時調べておけばよかったー!」ってなりますから。模試の解き直しもそうです。同じような知識が問われたときに、以前の解き直しがイケてないと、同じ間違えをします。大事なので、もう一度言います。自分が感じたモヤモヤは、その都度調べて解決しましょう。
良いホラー映画の特徴
この『アス(Us)』に限らず、良いホラー映画には共通の特徴があると個人的に思っていて、それは直接的または間接的に”現実社会の問題点を映し出している”という点です。例えば、『Us(アス)』で言えば、映画内で直接セリフや字幕で説明はありませんが、明らかにアメリカ国内またが世界で広がる経済格差の問題を取り上げている作品です。それは劇中に「ハンドアクロスアメリカ」という1980年代のイベントのCMやそれを連想させるテザードたちの動きから示唆されています。
過去には、まさに当時起こっていた戦争、黒人の権利上昇に対する白人側から見た恐怖、大手チェーンの台頭による地域経済の破壊など、リアルタイムに世界で起きている事柄や問題意識がホラー映画に反映されることが多々ありました。ホラー映画ではないですが、怪獣映画の金字塔『ゴジラ』も元々は原爆や戦争といった、当時の日本人が最も恐れていたものが反映されていました。間接的であれ、こういった「現実感」があるからこそ、観客は目の前で起きていることが単なる他人事と思えず、その映画に引き込まれるわけです。
また、こういった表のストーリーの裏に作り手の問題意識を描いたり、別の何かを象徴させることをメタファーと言います。映画にしろ小説にしろ、それぞれの作品内のメタファーを読み取ることは、物事の本質を読み取る力につながります。ですから、優れた映画や小説などの芸術作品(一般的にはジャンル映画として低くみられている節のあるホラー映画や怪獣映画であっても!)を単に消費するだけでなく、こちらの意識次第では絶好の学びの機会にもなるのです。
最後に
つまり、何を言わんとしているかと言うと、学びの機会はどこにでも転がっているんだ、ということです。それが映画にしろ、本にしろ、音楽にしろ、ゲームにしろ、スポーツにしろ。なので、何かに夢中になることはとても良いことです。そのバランスさえ間違えなければ。ですから、色々ものに興味を持って、そこからたくさん学びましょう。
そして、これを書いた後に気づいたのですが、映画『Us(アス)』はどうやらR-15指定らしく、小中学生は今すぐには観られないようです(笑)。やってしまいました。ただ、せっかく書いたのをお蔵入りにするのがもったいないので、今回の作品云々に留まらず、とても大切なことを書いているのであえて公開します。なので、気になる人は高校生以上になってから観てね。
今回はこんなところで。また、更新しますね。ではまた。
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