人生を豊かにする芸術作品⑧『gifted/ギフテッド』

こんにちには、フォルテの文系担当の上村です。

このシリーズでは、全小中学生にオススメの映画や小説などを紹介していきます。このシリーズで紹介するのは、私の考える「良い芸術作品」です。

ここでいう「良い芸術作品」とは、その作品に触れることで私たちが「何かしら成長できる」「何かを考えるきっかけを得られる」「何かしらを学べる」「モチベーションが高まる」作品を指しています。

優れた芸術作品(小説でも音楽でも絵画…etc)に触れることで私たちの人生は豊かになります。ここで紹介する良い芸術作品に触れることで少しでも子どもたちの人生が豊かになってくれればと思っています。

第八弾となる今回は、映画の『gifte/ギフテッド』です。

<参考記事>
第一弾:映画『ドリーム』(ココをクリック)
第二弾:映画『ズートピア』(ココをクリック)
第三弾:映画『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』(ココをクリック)
第四弾:映画『トイ・ストーリー4』(ココをクリック)
第五弾:映画『Us(アス)』(ココをクリック)
第六弾:映画『アルプススタンドのはしの方』(ココをクリック)
第七弾:映画『ミッション:8ミニッツ』(ココをクリック)

 

タイトルの「ギフテッド」とは?

この作品の登場人物である7歳の女の子・メアリーは生まれながらにして数学の天才です。このように、生まれながらにして豊かな知性や精神性を持っている子のことを「ギフテッド」と言います。wikipedia情報によると、アメリカの教育省では「ギフテッドとは、同世代の子供と比較して、並外れた成果を出せる程、突出した知性と精神性を兼ね備えた子供のことである。」と定義してる、とのことです。

「ギフテッド(gifted)」は、もともと「贈り物」を意味する”gift”が語源で、「(神から)贈られた才能(を持った子)」という意味でしょう。

こういった生まれながらにして特異な才能を持っている子に対しては、様々な国でそれ相応の教育が用意されています。特にアメリカでは、一般の子よりも短い期間で中学・高校を卒業し大学に進学する、いわゆる“飛び級”が認められている大学がいくつもあります。この他、裕福な家庭では家庭内で高度な教育を行う(ホーム・スクーリング)という例もあるようです。

ちなみに日本でも、一部の大学・学部で“飛び級”の制度はありますが、ほぼその制度は使われていません。というのも日本では、年齢=学年の考えが強いためと言われています。

このような特別な教育が認められている一方で、同年代の一般の子と同じような経験ができないことによる人格形成の問題や同年代の友人ができないなどの人間関係の問題があります。

 

映画『gifted/ギフテッド』とは?

今回紹介する映画『gifted/ギフテッド』(原題『Gifted』)は、その名の通り「ギフテッド」を扱ったヒューマンドラマです。監督はマーク・ウェブという人物で、主人公のほろ苦い恋愛模様を描いた『(500)日のサマー』(2009年)という映画が様々な映画賞で評価され、世界的に一気に有名になりました。また『(500)日のサマー』は、そのクオリティだけでなく商業的にも成功しました。アメリカ映画の中では小規模予算の映画(製作費約7億5千万円くらい)でしたが、その何倍もの興行収入を得たのでした。

その後、映画『アメイジング・スパイダーマン』とその続編の『アメイジング・スパイダーマン2』の監督を務め、この2作品は日本を含めた世界中で大ヒットしました。ちなみに『アメイジング・スパイダーマン』シリーズの1本あたりの製作予算は200億円以上です。

そして、再び『(500)日のサマー』と同じくらいの小規模予算の作品として『gifted/ギフテッド』(2017年)を製作しました。この作品の一般的な評価は、「ストーリーに斬新さこそないが、魅力的なキャストや優秀な製作者によって生み出された心温まる感動作」と言った感じでしょうか。私にとっても見るたびに心洗われるお気に入りの映画の1つです。見るたびに何度も泣いてしまいますので、ハンカチやティッシュの用意が必要です。

ちなみに「ギフテッド」の少女の叔父役として、マーベル映画『キャプテン・アメリカ』で知られるクリス・エヴァンスが主演しています。

 

あらすじ

フロリダの海辺の街で、ボートの修理をして生計を立てている独り身のフランク。彼は、天才数学者だったが志半ばで自殺してしまった姉の一人娘、メアリーを養っている。彼女は、先天的な数学の天才児「ギフテッド」であり、周りは特別な教育を受けることを勧めるが、フランクは「メアリーを普通に育てる」という姉との約束を守っていた。しかし、天才児にはそれ相応の教育を望むフランクの母(=メアリーの祖母)イブリンが現れ、フランクとメアリーの仲を裂く親権問題にまで発展していく・・・。

 

とにかくメアリー役の子役がすごい!

この作品を見て、誰もが感じるであろうことはギフテッド」のメアリーを演じたマッケナ・グレイスの素晴らしい演技です。彼女は大人びた7歳の天才少女を見事に演じ切っています。また、このような大人びた子どもが時折見せる年齢相応の子どもらしさに、私たちは感情を揺さぶられます。叔父のフランクに甘える姿、飼い猫のフレッドと戯れる姿、レゴで遊ぶ姿…などなど。

また、メアリーの親友は近所に住んでいる40代の女性ロバータ。メアリーがロバータと一緒に、ロバータの家でスピーカーから流れる音楽に合わせておもちゃのマイクを持ちながら熱唱しているシーンは、メアリーの子どもっぽさが表れているのと同時に、ロバータとの世代を超えた友情を示す名シーンです。

 

フランクがメアリーを「普通の子」として育てたい理由

メアリーの才能に気づいた周囲は、メアリーに「ギフテッド」向けの特別な教育を受けさせることを勧めます。しかし、メアリーの叔父フランクは、メアリーを同年代の一般の子が通う小学校に通わせて、「普通の子」として育てることにこだわります。それはフランクの姉であり、メアリーの母であるダイアンが望んだことがだったからです。

ダイアンは、100万ドルもの懸賞金がかけられた数学の難問「ナビエ・ストークス方程式」を解く一歩手前まで行くほどの天才数学者でした。しかし、その一方で天才ゆえの苦悩やシングルマザーとしての苦労があったのでしょう。ある日、フランクは思い悩んだ様子のダイアンから何やら相談を持ち掛けられますが、自分のプライベートな予定を優先してしまい、ダイアンの相談にまとも取り合いませんでした。結果、その日にダイアンは自殺したのでした。

フランクは、「自分があの時ダイアンの話をしっかりと聞いていれば…」という後悔の念を常に抱いており、その罪滅ぼしとしてせめて生前のダイアンが最も望んでいたこと(=「ギフテッド」のメアリーに「普通の子」として育ってほしい)を自分が責任を持って実現しようと決意します。

そこで大学教員という安定した職を捨て、都会ボストンから自然豊かで温暖な地フロリダへとメアリーと共に引っ越し、メアリーを実の子どものように愛情を注いで育ててきました。メアリーも自分のことを世界中の誰よりも愛してくれるフランクのことが大好きでした

決して裕福ではありませんでしたが、大好きなフランクや愛猫のフレッド、そして近所のロバータと一緒の生活はメアリーにとってはとても幸せなものでした。しかし、そんな幸せな生活はメアリーの祖母イヴリンが現れることによって揺るがされます。

 

(多少ネタばれ有り)イヴリンがメアリーの才能にこだわる理由

イヴリンは、メアリーが「ギフテッド」であることを聞きつけ、その才能を伸ばすための高等教育を受けさせるべきだと強く主張します。メアリーは、今まで解いたことのないような難しい数学の問題を解いたり、レベルの高い勉強ができたりする環境に対して大きな魅力は感じたものの、それでも大好きなフランクと暮らすことを望みます。

そんなメアリーの意思を無視して、イヴリンはフランクとの生活を強制的に終わらせるため、裁判を起こしてフランクからメアリーの親権を奪おうとします。イヴリンはなぜそこまでしてメアリーの才能を伸ばすことにこだわったのでしょうか。

実は、イヴリン自身もかつて数学の才能を持った人間の一人でした。そして、いつかは歴史に名が残るような数学者になりたいと夢見ていました。しかし、結婚・出産を機に数学者としての道を諦めます。そこで生まれた娘ダイアンに自分の夢を託し、数学者としての英才教育を受けさせました。それは時にダイアンの意思や自由を完全に無視するものでした。イヴリンはいわゆる「毒親」と化し、娘ダイアンのことを自分の夢を叶えるための道具としてしか考えないようになります

ですから、ダイアンが亡くなった今、次は孫メアリーに自分の夢を託そうとしたのです。もちろん優先順位としては、メアリー個人の幸せよりも自分の夢を叶えることの方が圧倒的に高いわけです。

こんな「毒親」に育てられたダイアンですから、「自分の子どもに自分と同じような思いをさせてはいけない!」と考え、メアリーには「普通の子」として育ったほしいと強く望んだのです。

 

(多少ネタばれ有)裁判の行方は?

裁判では、フランク・イヴリンともに激しくメアリーの親権を主張しますが、どちらも決め手に欠けます。ただし、フランク側の弁護士いわく、そういった場合に今回の担当裁判官は両者の経済力を比べるとのことです。一般的に親にお金があった方が、子どもは幸せな生活が送れるはずだと考えられるからです。そうなるとフランクにとっては不利です。大学教員を辞めてからずっと仕事としてやっている船の修理業は、正直儲かる仕事ではありませんでした。

一方でイヴリン側も、イヴリンがダイアンに行っていた常軌を逸した管理と英才教育が裁判の中で明らかになったことで自分たちの分が悪いと思っていました。そこでフランク側に対して、メアリーがレベルの高い教育が受けられて、なおかつ何不自由ない生活が送れるように、メアリーを里子に出すことを提案します。その提案の条件としては、「里親はフランクの家の近くの人であること」「猫のフレッドもメアリーと一緒に暮らすこと」「フランクとメアリーの面会日が定期的に設けられる」などが取り入れられました。

イヴリンが住んでいるのはボストンで、フランクの住んでいるフロリダからは遠く離れていますから、裁判に負けてイヴリンに親権を完全に取られてしまうと、フランクはメアリーに気軽に会えなくなってしまいます。そこでフランクは、悩みに悩んだ末に相手側からの提案を受け入れ、和解という形で裁判は終了します。これによってフランクとメアリーによる2人の生活は終わりを迎え、メアリーは別の家に里子として出されます。

 

(ネタばれ有)メアリーにとっての幸せとは?

メアリーが里子に出されてからしばらく経ったある日、メアリーが元々通っていた小学校の先生からフランク宛てに一通のメールが送られてきます。添付されている写真を見ると、里親のところでメアリーと一緒に暮らしているはずの猫(フレッド)が映っており、さらによく見るとフレッドの新しい飼い主募集のチラシでした。メアリーが大好きなフレッドを自分から手放すはずがありません。

フランクはここでイヴリンが和解案の約束を破っていたことに気づきます。そして、保健所で殺処分直前のフレッドを救い出すと、里親の家に乗り込み、メアリーを取り返そうとします。案の定、里親の家ではイヴリンによる数学の英才教育が行われている最中でした。

そこで明らかになるのが、実はダイアンは「ナビエ・ストークス方程式」を生前に解いていて、それを論文にまとめていたということでした。しかし、母イヴリンへの強い反発から、そのことをイヴリンには伏せておき、イヴリンの死後に公表してほしいということをフランクに伝えていたのでした。

イヴリンはそこで、自分が娘から恨まれていたこと、娘を追い込んでいたのは自分であったことに初めて気づきます。そして、メアリーから手を退く代わりにダイアンの残した論文を受け取り、専門家と協力してダイアンの功績を発表するための手続きに専念することを決めます。

その後、メアリーは昼までは大学レベルの授業を受け、放課後は地元の同年代の子どもたちと一緒に遊ぶことができる生活を手に入れます。ただ、何よりもメアリーにとって幸せなのは、大好きなフランク、愛猫のフレッド、親友のロバータとこれからも一緒に暮らせることです。

 

映画『gifted/ギフテッド』のメッセージとは?

この作品のメッセージの一つは、たとえ貧しくても本当に自分を愛してくれる人と一緒に暮らすことが何よりも幸せであるということですね。

親権争いの裁判中、児童カウンセラーと話をしている中でメアリーはフランクのことを「良い人だ」と話します。その理由を問われたときにメアリーはこう答えます。

「彼は私のことを最初から愛してくれた。」

これはこの作品の中で最も印象深いセリフの1つです。メアリーが「ギフテッド」だから親権を欲しがるイヴリンと、メアリーのことを一人の子どもとして愛してくれたフランク。メアリーにとって、どちらと暮らす方が幸せなのかは明白ですね。

ということで、映画『gifted/ギフテッド』は、万人のオススメできる感動作です。是非、ご覧ください。

 

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