人生を豊かにする芸術作品⑨『あの夏のルカ』

こんにちには、フォルテの文系担当の上村です。

このシリーズでは、全小中学生にオススメの映画や小説などを紹介していきます。このシリーズで紹介するのは、私の考える「良い芸術作品」です。

ここでいう「良い芸術作品」とは、その作品に触れることで私たちが「何かしら成長できる」「何かを考えるきっかけを得られる」「何かしらを学べる」「モチベーションが高まる」作品を指しています。

優れた芸術作品(小説でも音楽でも絵画…etc)に触れることで私たちの人生は豊かになります。ここで紹介する良い芸術作品に触れることで少しでも子どもたちの人生が豊かになってくれればと思っています。

第九弾となる今回は、みんな大好きなピクサー映画の『あの夏のルカ』です。

<参考記事>
第一弾:映画『ドリーム』(ココをクリック)
第二弾:映画『ズートピア』(ココをクリック)
第三弾:映画『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』(ココをクリック)
第四弾:映画『トイ・ストーリー4』(ココをクリック)
第五弾:映画『Us(アス)』(ココをクリック)
第六弾:映画『アルプススタンドのはしの方』(ココをクリック)
第七弾:映画『ミッション:8ミニッツ』(ココをクリック)
第八弾:映画『gifte/ギフテッド』(ココをクリック)

 

コロナ禍のピクサー作品への影響

2020年からの新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、ピクサー作品の公開も大きな影響を受けました。まず2020年3月に日本公開予定だった『2分の1の魔法』は公開が延期となり、その後2020年8月に公開しました(アメリカでは同年3月公開)。

また、その次の『ソウルフルワールド』と今作『あの日のルカ』の2作品は、劇場公開自体が見送られ、ディズニー+での配信公開となりました。この2作品とも間違いなく傑作ですし、ピクサー作品は作品ごとに映像的進化がはっきりと見られるので、個人的にそれを劇場の大きなスクリーンで見られなかったこと、また同時に映画館での公開を通して多く人々に良い作品が届く機会が失われてしまったことが残念でなりません。

 

映画『あの夏のルカ』とは?

この作品は、ピクサーの長編作品として最初の『トイ・ストーリー』から数えて24作目になります。監督は、イタリア人のエンリコ・カサローザという人物で、この人については名前に全く聞き覚えがありませんでしたが、過去には同じくピクサー作品の『メリダとおそろしの森』(2012年)と劇場で同時公開された短編『月と少年』という作品を手掛けた人とのことで、私は『メリダとおそろしの森』は劇場で見ているので、うっすらと『月と少年』についても記憶があるくらいだったので、この機会に見直してみました(こちらの短編は『メリダとおそろしの森』のBlu-rayソフトまたは短編集『ピクサー・ショート・フィルムVol.2』に収録されています)。こちらもとても良い作品でした。

 

あらすじ(ディズニーのHPより)

平穏な海の世界に暮らすシー・モンスターの少年ルカ。友人のアルベルトと〈海の掟(おきて)〉を破り、人間の世界に足を踏み入れる。身体が乾くと人間の姿になる彼らは、少しでも水に濡れると元の姿に…。この“秘密”を抱きながらも、ルカは目の前に広がる新しい世界に魅了されていく。だが、2人の無邪気な冒険と友情はやがて、海と陸とに分断されてきた2つの世界に大事件を巻き起こす─。

公式キャッチコピー
「秘密を抱えたあの夏、僕たちは少し大人になった・・・」

 

ルカは初めて「外の世界」へ

ルカの両親は過保護気味で、我が子を危険な目に合わせたくない一心で、「『外の世界(=人間の住む陸上)』へ行ってはいけない」と常々口うるさく言っていました。しかし、好奇心旺盛なルカは外の世界が気になっています。そしてある日、偶然海底に落ちてきた人間の道具を見つけたことで、「外の世界」への興味は膨れ上がってしまいます。こういった、子どもの好奇心や少し過保護気味の親といえば、ピクサーの過去作『ファインディング・ニモ』に通じる部分があります。そして、『ファインディング・ニモ』(&続編『ファインディング・ドリー』)以上に、今作での海の中の描写はとても美しく、なおかつ創造力に富んでいて、見ていると非常にわくわくします。

ルカは「外の世界」への興味がマックスになったのと時を同じくして、同じシー・モンスターの少年アルベルトに出会います。どうやらアルベルトは何度も「外の世界」に行ったことがあるようです。そして、アルベルトの案内でルカは初めて「外の世界」へ行きます。その日以来、ルカはたびたび「外の世界」にアルベルトとともに行くようになります。

陸上に上がるのが初めてのルカは、姿こそ人間になったものの、二本足で歩いた経験がないので、アルベルトの助けを借りながら二足歩行の練習をする場面は微笑ましく新鮮です。

 

あこがれの「ベスパ」とジブリ作品オマージュ

普段は父親と二人で生活しているいうアルベルトですが、ちょうど今は父親がしばらく遠くに出かけていて、今は一人で暮らしているとのことでした。そして、陸上にあるアルベルトの秘密基地風の家にあがったルカは、「どこへでも行ける」という人間の乗り物「ベスパ」を知り、興味とあこがれを抱きます。そして、「僕たちは、『ベスパ』があれば自由になれる」と思います。ちなみに「ベスパ」は、映画『ローマの休日』(1953年)や日本のドラマ『探偵物語』(1979年)などに登場するイタリア製のスクーターです(↓参考画像)。

二人は海で拾ったガラクタを使ってお手製の「ベスパ」を作って、一緒に坂を駆け下ります。このくだりは、おそらくジブリ映画の『魔女の宅急便』でのトンボがお手製の自転車で空を飛ぼうとしてそれにキキが付き合うシーンのオマージュだと思います。というのも、エンリコ・カサローザ監督は、ジブリ作品が大好きであることを公言しており、ほかにもジブリ作品へのオマージュと思われるところがいくつもあります。例えば、今回二人が訪れる人間の町はポルトロッソと言います。これはジブリ作品の『紅の豚』の主人公ポルコ・ロッソから来ているといわれています。

 

人間の町へ、そしてレースに向けた特訓

ある日、ルカは両親に「外の世界」に行ったことがバレてしまい、そのペナルティとしてメチャクチャ怖い親戚のおじさんのいる深海に連れて行かれそうになります。それを避けるためにルカは「外の世界」へと家出をして、アルベルトともに港町ポルトロッソに行くことにします。

ポルトロッソに来た二人は、初めて本物の「ベスパ」に出会います。そして、その町で毎年開催される三種目(パスタの早食い・水泳・自転車)レース大会「ポルトロッソカップ」の存在、そしてそのレースで優勝すれば賞金を手に入れることができ、その賞金があれば「(中古でボロボロの)ベスパ」が買えることを知ります

また、そのレースではエルコレという不良が5年連続で優勝しているということを知り、そして毎年レースに負けて悔しい思いをしているジュリアという少女に出会います。

ルカとアルベルトはジュリアとチームを組んで、レースに出場することになります。ルカは自転車、アルベルトはパスタ早食いをすることになります。ただし、ルカは自転車に乗るのは初めてですし、アルベルトもフォークを使ってパスタを食べるのは初めてです。このままでは優勝なんてとてもじゃないけどできません。そこでジュリアの家に住み込んで、レースに向けた特訓を始めます。

しかし、二人は陸上にいても体が水にぬれるとシー・モンスターの姿に戻ってしまいます。そして、ポルトロッソの町の人々はいまだに見たことのないシー・モンスターを伝説の怪物と恐れており、いつか見つけて退治してやろうと思っています。そこで、二人は姿がバレないようにぬれるのを避けながら特訓生活をしていきます。特にジュリアの父マッシモはシー・モンスターを捕まえたいと人一倍思っている人でした。

最初は全く登れなかった坂道をだんだんと登れるようになっていくルカの姿と、フォークに使い方をマッシモに習ううちにパスタを食べるのがだんだんと上手になっていくアルベルトの姿がしっかりと段階を踏んで丁寧に描写されています

 

(多少ネタばれ有)新しい世界に興味を持つルカ

ジュリアは、普段はジェノバという別の町の学校に通っており、夏の間だけポルトロッソに帰省しているのでした。ジュリアから学校で使っている教科書(参考書?)を見せてもらったルカは、天文学を知り、学問やそれを学ぶ場所である学校に興味を持ちます。そして、今の自分の刺激のない退屈な生活を変えるために必要なのは、「ベスパ」ではなく自分が興味を持ったことを追求する新しい生活だと思い始めます。

一方、こう考え始めたルカが自分から離れて行ってしまうように感じたアルベルトは、だんだんとルカをそういう方向に導いたジュリアに対して冷たい態度をとるようになります。そしてある日、アルベルトはルカと喧嘩し、その時の勢いで自分たちがシー・モンスターであることをジュリアの前でばらしてしまいます

ジュリアに正体がバレてしまったため、ジュリアの家に居られなくなったルカは、仲直りをするためにアルベルトの家を訪れます。そこで、アルベルトの父親はずいぶん前に蒸発してしまっていて、アルベルトはずっと独りぼっちだったこと、さらにそんなアルベルトにとってはルカが唯一の友人であったということを知ります。そして、アルベルトの存在を再認識したルカは、当初の目的であった「ベスパ」を手に入れるために一人でレースに出場することにします

 

(ネタばれ有)レース出場、そして決着

そして、レース当日。レースは水泳→早食い→自転車の順でレースを行われます。ルカは普通に泳いでしまったら体がぬえてシー・モンスターの姿になって、ジュリア以外の人々にも正体がバレてしまうため、体がぬれないように宇宙服のようなスーツを着て泳ぎ(というか海底を歩いて)、水泳を何とか乗り切ります。

次にパスタの早食い。ここでもジュリアの助けもあって、何とかフォークを使いこなしパスタを食べきることができました。しかし、食べきるのに時間がかかってしまい、ここでかなり順位を落としてしまいました。

最後は、今まで一生懸命練習してきた自転車。ここでは今までの特訓の成果が発揮され、坂道で前を走っている選手たちをごぼう抜きし、なんとルカはトップに躍り出ます。しかし、坂を上り切ってあとは坂を下るだけという地点で、雨が降ってきてしまいます。体がぬれるとシー・モンスターに戻ってしまい、正体がバレてしまいます。困って雨宿りしていると、アルベルトが走って傘を持ってきてくれました。

しかし、不良のエルコレはそれを妨害するためにアルベルトを突き飛ばします。突き飛ばされたアルベルトは雨にぬれて、みんなの前でシー・モンスターの姿になってしまいます。その姿を見たエルコレは、網を使ってアルベルトをとらえようとします。アルベルトを助けるためにルカはぬれることを恐れずに雨の中に飛び出していき、アルベルトを助けて一緒に自転車で坂を下ります

下り坂でエルコレを振り切り、二人はゴールまで来ます。しかし、ゴール手前で転んだジュリアを助けるために二人は引き返して、ジュリアに肩を貸します。しかし、「おい、シー・モンスターだぞ!」と言う町の人々。そこで人一倍シー・モンスターを捕まえようとしていたジュリアの父マッシモが出てきます。マッシモは二匹のシー・モンスターが自分の家に住み込んでいたルカとアルベルトであることに気づきます。そのマッシモのリアクションから周囲の人々も二匹を受け入れます。

さらに、二人の乗った自転車がジュリアを助ける前の段階で実はゴールラインを過ぎていたこともわかり、二人はポルトロッソカップの優勝者としても認められます

 

(ネタばれ有)感動のエピローグ

優勝賞金で「ベスパ」を購入した二人。しかし、ボロボロの中古なので、それで旅に出るには時間をかけて修理する必要があります。しかし、そうこうしているうちに学校再開の時期になり、ジュリアがジェノバの町に戻る日が来ました

父のマッシモ、そしてルカたちと別れの挨拶をして汽車に乗り込むジュリア。そして、別れを惜しんでいるルカに対して、アルベルトがさっとジェノバ行きの切符を手渡します。実は、アルベルトはせっかく手に入れた「ベスパ」を売ってしまっていて、そのお金で買ったジェノバ行きの汽車の切符をルカにプレゼントしたのでした。友人として、ルカの幸せを考えた末の行動だったのでしょう。また、ルカの家族もルカの気持ちを尊重して、学校に通うことを認めてくれます。ルカの家族はレースでのルカの姿を見て、少し見ない間にルカが大きく成長したことを知ったのでした。ルカが危険な目に合わないようにと、今までルカの行動を制限してきた両親は、今のルカならこれから待ち受けるであろうどんな困難にも自分の力で立ち向かうことができると思ったのでしょう

一方で、アルベルトは、レースに向けた住み込みでの特訓中に海での漁を手伝っているうちに、ジュリアの父マッシモとの間で本当の父と子のような愛情を感じていて、これからは二人で暮らすようになります。唯一の友人であったルカと離れ離れになってしまったアルベルトでしたが、一緒に暮らす新しい家族が出来のでした

ルカが汽車に乗り込み、ジェノバの町に向かう中で映画は終わりエンドロールになりますが、エンドロールでは登場人物たちのその後が描かれます

 

映画『あの夏のルカ』のメッセージは?

エンリコ・カサローザ監督はこの作品を「とても個人的な物語」なのだと言います。今作の舞台は架空の町ですが、それは監督自身が育ったイタリアの町がモデルになっているようで、「少年同士の絆が将来を切り開く」というのが大きなテーマであると語っています。しかも、アルベルトというのは監督自身が中学生の頃に出会った友人の名前で、その友人はシャイで地味な生活を送っていた監督の背中を教えてくれた人なのだと言います。このことからも、この物語の主人公ルカは監督の少年時代を投影したキャラクターであることがわかりますね

また、この物語の中で象徴的に描かれているのが他者や異文化との共存です。世界が分かれてしまっていて、お互いを恐れ嫌い合っている人間とシー・モンスター。しかし、それはお互いを知らないから来るものであり、そういった先入観やイメージを持たずに付き合い始めたルカ&アルベルトとジュリア&マッシモの間には間違いなく友情や愛情が生まれていました。この部分に関しては、ルカの祖母のセリフが最も印象的です。

「あの子(=ルカ)を受け入れない者はいる。でも、受け入れてくれる者もいる。ルカはもうちゃんと見つけているよ。」

そして、このセリフに対応するようにルカが汽車に乗るラストシーンでは、大きく広がる曇り空の間から太陽の光が差す描写で終わります。これは、これから待ち受けているであろう厳しい環境や境遇(=曇り空)の中にも確かに希望(=太陽の光)はあるという情景描写でしょう。

いやー、ピクサーがまたとんでもない作品を作ってくれました。是非、ご覧ください。

 

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人生を豊かにする芸術作品④映画『トイ・ストーリー4』

こんばんは、フォルテの文系担当の上村です。今回は、この夏のオススメ映画についてです。

このシリーズでは、全小中学生にオススメの映画や小説などを紹介していきます。このシリーズで紹介するのは、私の考える「良い芸術作品」です。

ここでいう「良い芸術作品」とは、その作品に触れることで私たちが「何かしら成長できる」「何かを考えるきっかけを得られる」「何かしらを学べる」「モチベーションが高まる」作品を指しています。

優れた芸術作品(小説でも音楽でも絵画…etc)に触れることで私たちの人生は豊かになります。ここで紹介する良い芸術作品に触れることで少しでも子どもたちの人生が豊かになってくれればと思っています。

第四弾となる今回は、説明不要の大人気シリーズ『トイ・ストーリー』の4作目、『トイ・ストーリー4』です。この夏、最重要作品であろうことは誰もが認めるところでしょう。前作『トイ・ストーリー3』はラストがもう完璧で、理想的なシリーズ完結作だと思われていたが、予想に反してつくられた今作。その出来はいかに・・・。

<参考記事>
第一弾:映画『ドリーム』(ココをクリック)
第二弾:映画『ズートピア』(ココをクリック)
第三弾:映画『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』(ココをクリック)

あらすじ(公式HPより引用)

おもちゃにとって大切なことは子供のそばにいること”。新たな持ち主ボニーを見守るウッディ、バズら仲間たちの前に現れたのは、彼女の一番のお気に入りで手作りおもちゃのフォーキー。しかし、彼は自分をゴミだと思い込み逃げ出してしまう。ボニーのためにフォーキーを探す冒険に出たウッディは、一度も愛されたことのないおもちゃや、かつての仲間ボーとの運命的な出会いを果たす。そしてたどり着いたのは見たことのない新しい世界だった。最後にウッディが選んだ驚くべき決断とは

 

そもそも『トイ・ストーリー』シリーズとは

『トイ・ストーリー』は、アンディ少年のおもちゃである、カウボーイ人形のウッディと、宇宙ヒーローのプラスチック製おもちゃのバズ・ライトイヤーを主人公とした、擬人化されたおもちゃたちの物語です。今まで公開されたシリーズ3作品は、日本も含め全世界で特大ヒットを記録し、今やディズニー関連だけでなく、世界で最も人気のあるアニメシリーズと言えるでしょう。

そして、このシリーズの1作目『トイ・ストーリー』は、実は映画史上に残る最重要作品です。というのも、今や長編アニメ映画の主流となっているフルCGという形式ですが、これを世界で初めて実現したのが『トイ・ストーリー』なのです。それまでの主流は日本であれば、ジブリ作品に代表される手書きアニメでした。実際にディズニーでも『アラジン』『ライオンキング』『美女と野獣』などの90年代の人気作品は手書きアニメですよね。やはり当時は今ほどCG技術が発達していなかったので、短編ならまだしも長編でそれを見続けるのはかなり厳しかったのですね。

ですから、『トイ・ストーリー』は制作段階から、懐疑的な見方が多く、各おもちゃ会社も自社のキャラクターを『トイ・ストーリー』に出演させることに非協力的でした。2作目から登場しているバービー人形もその1つでした。また、ある程度制作が進んだ時点でのストーリーの大幅な練り直しや資金の調達などの面で前途多難でした。それでも制作陣の絶え間ない努力によって極上の脚本が完成しました。

そんな紆余曲折あって1995年に公開された『トイ・ストーリー』は、世界中で大ヒット(その年の全米興行収入年間1位)を記録し、それまでの世界の常識を覆したのでした。それくらい凄い作品なのです。

 

ピクサーアニメーションスタジオとは

この『トイ・ストーリー』はピクサーアニメーションスタジオ(通称”ピクサー”)制作の長編映画第1弾です。ピクサー作品は、その後も『ファインディング・ニモ』『モンスターズ・インク』『カーズ』『ミスターインクレディブル』など、ハイクオリティな作品を連発している、世界最高峰のクリエイター集団です。

ピクサー作品のクオリティを支えるのは、『ズートピア』の記事でも紹介した通り、天才たちが寄ってたかってストーリーをより良くするために意見を出し合う「ブレイントラスト方式」というピクサー独自の会議形態です。この方式があるからこそ、ピクサー作品は、子どもから大人まで楽しめる素晴らしい物語になるのです。

その中心人物はピクサー創設当時からの中心メンバーであり、自身が天才アニメーターであるジョン・ラセターでした(現在はピクサーを退社)。ジョン・ラセターは、ジブリの宮崎駿を師匠として尊敬しており、彼が作ってきた作品には宮崎駿作品の影響が随所に見られます。さらに、『千と千尋の神隠し』のアメリカ公開時に、宣伝活動や翻訳の指揮をとるなど尽力し、同作のアカデミー賞受賞に大きく貢献しました。

今は諸々の事情で退社していますが、ピクサーには確実のこのジョン・ラセターのDNAが息づいています。

 

『トイ・ストーリー4』の見どころは?

私自身、『トイ・ストーリー』シリーズの大ファンで、すべて劇場で鑑賞していますし、ブルーレイも所有しています。そして、前述の通り、『トイ・ストーリー3』はシリーズの完結編として完璧な作品でした。実際に、ピクサー側も当初は続編を作るつもりはなかったとのことでした。さらに、制作途中で中心人物のジョン・ラセターがピクサーを退社するアクシデントもありました。なので、今回の『トイ・ストーリー4』は必然性や作品のクオリティを不安視する声がありました。

そして公開された今作。結論から言うと、これまでのシリーズ作品同様、個人的には大好きな作品でした。そもそも『トイ・ストーリー』というのは、単におもちゃが主人公というだけでなく、「子どもにエンターテイメントを提供する」人たち(=おもちゃたち)の話です。なので、子どもよりも大人の方が主人公たちに感情移入がしやすいシリーズになっています。ただ、それだけでなく子供も退屈しないようにアクションシーン、ギャグシーン、ドラマシーンなどふんだんに盛り込まれています。

まず、冒頭のシーンから物語に引き込まれます。舞台は今から9年前、ウッディたちがまだアンディ少年の家にいた頃です。大雨が降る中、庭の溝にはまってしまった車のおもちゃをウッディたちが協力して救出します。おもちゃたちの息の合った連携プレーは見ていて気持ちよく、また救出後、アンディ少年に家に残るウッディと他の子の家にもらわれていくボー・ピープ(女性人形のおもちゃ)の別れのシーンはこの映画のストーリーやテーマに大きく関わってきます。

そして、この作品での最も重要な部分がウッディの考え方の変化(=成長)です。ウッディは今まで、自分がアンディの一番のお気に入りであったこともあり、アンディ(=持ち主)のためにとことん尽くしてきました。それがおもちゃである自分の使命だと感じていたし、またアンディにも自分が絶対に必要だと心の底から信じていました。しかし今回、新しい持ち主であるボニーにとって、ウッディはお気に入りのおもちゃではありません。他のおもちゃたちがボニーと遊ぶ中、ウッディはクローゼットの中に置いてけぼりです。それでもボニーの幸せのためには自分が必要だと信じて疑わず、ボニーのために頑張っていましたが、ボー・ピープとの再会を通して、徐々に自分が頑張っているのは、本当は「ボニーのため」ではなく「自分のため」だったのではないかと思い始めます。自分自身の存在価値を否定したくないがために、必死に頑張っていたのではないか。そして、ウッディが最後に下した決断とは・・・、といったところです。私は最後は号泣でした。

また、全体を通して映像は本当に綺麗で、最初のシーンは実写のシーンと見間違えるほどリアルですし、途中で登場するアンティークショップの描写も素晴らしいです。背景だけでなく、ウッディやボー・ピープなどのおもちゃの表情がとても豊かでセリフなしでも感情が十分伝わってくるほどです。これは特にシリーズ当初の作品と見比べると、ここ20年程での技術の進歩を大きく感じることが出来ます。人間の表情も同様です。

さらに、ピクサー作品ではお馴染みの細かい遊び心に溢れたシーンを今作でも楽しむことが出来ます。過去のピクサー作品のキャラクターがちょっと搭乗していたり、過去の名作映画のオマージュシーンがあったりもします。

 

『トイ・ストーリー4』のメッセージ

これは『トイ・ストーリー』シリーズ全体のテーマでもあり、私たちの人生の様々な場面につながることだと思いますが、「自分が必要とされていること=自分の使命」であるということだと思います。監督自身も、この映画で描いているのは「人生の岐路」だと語っています。なので、今作を通してウッディは「自分を本当に必要としているのは誰なのか?」「自分が本当にすべきことは何なのか?」を悩むわけです。

個人的には、塾講師という仕事は奇しくもウッディたちと同じく子どもたちに何かを与える仕事なので、より一層このシリーズの持つメッセージやテーマについて普段の出来事や実感も相まってとても考えさせられます。

そして、今回からの新キャラクターであるフォーキーからは、「自分の使命に出身は関係ない」「価値観は人によって大きく異なる」ことがわかります。フォーキーはゴミ箱の中から集められたゴミでできたおもちゃです。しかし、ボニーにとっては他のどんなおもちゃらしいおもちゃよりもフォーキーが一番お気に入りのおもちゃなのです。

さらにピクサー作品だと『カールじいさんの空飛ぶ家』にも通じる、「過去にとらわれていては今を生きることができない。前に進むためには、何かを失わなければならない。」といったメッセージも感じました。

 

日米で割れる評価

鑑賞後に今作の評判をインターネットで調べてみたら、面白いことに、日本とアメリカで大きく評価が分かれていました。アメリカの大手のレビューサイト「Rotten Tomato」では観客の満足度は94%、評論家や新聞紙上での支持率(評価)は98%という圧倒的な高さを誇っています。一方で、この記事を書いている時点での日本のYahoo映画での観客の評価は5点満点中で3.3点です。まだ公開初日なので何とも言えませんが、前作の『トイ・ストーリー3』の評価が4.5点ということを考えると、現時点でかなり評価が低いことがわかります。

そして低評価の人のレビューを見ていると、「今までのシリーズを否定しているようで嫌だ」という評価がほとんどです。それは映画のラストに不満を持っているということでしょう。それはウッディの考えの変化を成長ととらえるのか、裏切りととらえるのか、だと思います。特に初日から観に行っているということは、シリーズのファンである可能性が高いので、このウッディの考えの変化を自分が好きだった過去作を否定されたととらえた人が多いのかもしれません。このようなレビューサイトの評価によっては私のこの作品に対する考えや評価が変わることはないのですが、今後も今作の評判の動向はチェックしたいと思います。

ということで、『トイ・ストーリー4』は、個人的に超オススメです。

今回はこんな感じで!また更新します!

 

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人生を豊かにする芸術作品②映画『ズートピア』

こんばんは。フォルテの文系担当の上村です。

このシリーズでは、全小中学生にオススメの映画や小説などを紹介していきます。このシリーズで紹介するのは、私の考える「良い芸術作品」です。

ここでいう「良い芸術作品」とは、その作品に触れることで私たちが「何かしら成長できる」「何かを考えるきっかけを得られる」「何かしらを学べる」「モチベーションが高まる」作品を指しています。

優れた芸術作品(小説でも音楽でも絵画…etc)に触れることで私たちの人生は豊かになります。ここで紹介する良い芸術作品に触れることで少しでも子どもたちの人生が豊かになってくれればと思っています。

そして前回の映画『ドリーム』(2016年)に続いて、第二弾として紹介するのはディズニー映画『ズートピア』(2016年)です。これは深くて心底面白い映画です。

あらすじ(公式HPより引用)

故郷の田舎町から憧れのズートピアにやってきたウサギのジュディ。彼女の夢は、「立派な警察官になって世界をよりよくする」こと。でも警察官になれるのは、サイやカバなどタフな動物だけ…けれどジュディは、現実の壁に立ち向かいながらも夢をあきらめず、見事“ウサギ初!”の警察官に!しかし、サイやゾウなどの同僚たちが動物たちの連続行方不明事件の捜査に向かう中、ジュディに与えられた任務は駐車違反の取り締まりだった。能力を認めようとしないスイギュウのボゴ署長に憤慨したジュディは、驚異的な仕事ぶりを見せる。

ある日、街で困っているキツネの親子を助けたジュディだが、実は彼らは夢を信じない詐欺師のニック達であった。そんなニックに対して、騙されていたことへ腹を立てながらもジュディはあきらめない。カワウソのオッタートンの行方不明事件が未捜査だと知ると、「私が探します。」と宣言する。ヒツジのベルウェザー副市長の後押しもあり、ボゴ署長はしぶしぶ認めるも、与えられた時間はたった48時間。失敗したらクビで、彼女の夢も消えてしまう…。手がかりがほとんどなく、唯一の頼みの綱は事件の手がかりを握る詐欺師のキツネ、ニックだけ。最も相棒にふさわしくない二人は、互いにダマしダマされながら聞き込み調査を続け、有力情報をたよりにツンドラ・タウンの一台の車にたどり着く。その車内には、行方不明のオッタートンの痕跡が!だが、その車はなんとツンドラ・タウンの闇のボス、ミスター・ビッグの車だった。ジュディとニックは手下に捕らわれるも、なんとか危機を逃れる。しかし、危機を乗り越えた二人を待っていたのは、ズートピアで何かが起こっていることを予感させる衝撃の光景だった!

ボゴたちが到着した時には、その証拠は消えジュディの言葉は誰にも信じてもらえない。しかも、大きな成果を得られないまま約束の48時間まで残り10時間――ついにジュディはボゴから「クビ」を宣告されてしまう。夢を失う危機に落ち込むジュディを救ったのは、ニックの意外な一言だった…。果たして、ジュディの夢を信じる心は楽園の秘密を解き、世界を変えることができるのか?

 

『ズートピア』の見どころ

この映画で扱っているテーマは、前回の『ドリーム』と同じく「差別」と「偏見」です。それでも、これまた前回の『ドリーム』同様、扱っているテーマが重いにもかかわらず、映画自体に暗さを出さずにディズニーが対象とする観客(小さい子どもから大人まで)がエンターテイメントとして十分に楽しめるような工夫がこれでもかというほど盛り込まれている傑作です。むしろ、そういう工夫が本当に緻密なので、小さい子どもはこの「差別」と「偏見」というテーマには気付かずに純粋に楽しめます。そして、数年後にふと思い返したり、映画を観返したりしたときに「あれ、『ズートピア』って意外と深い映画なんじゃない?」と気付くでしょう。行方不明となった動物たちの謎を追っていくサスペンス映画の側面、ジュディとニックの友情の育みを描く相棒映画(バディムービー)の側面、犯人追跡や列車をメインとしたアクション映画の側面などが純粋に楽しめる大きな要素です。その他の見どころもたくさんあるのでネタバレしないように紹介します。

まずはストーリーの素晴らしさ。この映画のストーリーで最も素晴らしい点は、主人公であるウサギのジュディをただの弱者(差別や偏見の被害者)として描かなかったことです。ウサギのジュディは子どもの頃から「ウサギに警察官は無理」と言われて自分の夢をキツネや実の両親から否定されたり、念願の警察官となって出勤しても大した仕事を任されなかったりします。普通の映画であれば、その逆境に負けずに、ジュディが努力や工夫で様々な困難や壁を乗り越えていって、周囲もジュディを認めるようになって大団円、という感じなると思うのです。しかし、この映画ではそのジュディの中にも実は他の動物に対して偏見があります。そう、つまり「誰の中にも差別意識や偏見は存在する」ということです。その差別意識や偏見に気づいたときにどう向き合うのか、そしてジュディはどう成長するのか、というのが大きなテーマであり、見どころの一つです。あとはお手本ともいえる伏線の回収も見事です。伏線の回収とは、映画の前半で登場したアイテムやセリフが後半のクライマックスで活かされるということです。良い映画や小説はたいてい伏線の張り方が上手いものです。こういう良い構造の作品に触れることで、自分自身の表現技術(作文とか)にそれらを活かすことが出来るので、子どもたちには良い映画や小説にたくさん触れてほしいと思います。

次に純粋な映像的な楽しさです。動物たちの住む街・ズートピアの世界観は見ているだけでわくわくします。これは予告編の時点でも心躍りました。その根本にあるのは動物たちのリアルなサイズ感の描写です。これは今までの動物を擬人化した作品(ディズニー作品や非ディズニー作品問わず。)とは明らかに違う点で、それぞれの動物のサイズ感(動物同士のサイズ比)がとてもリアルなのです。キリンやゾウは本当に大きく描かれ、ウサギやネズミは本当に小さく描かれています。そしてだからこそ、列車のドアが大きい動物用と小さい動物用に分かれていたり、他の動物からそれぞれの動物を見たときの視点が描かれていたりと、面白い描写が盛りだくさんです。しかもそれぞれの動物の動きや表情がそれぞれ特徴的で、映画を何度も見返して確認したくなります。1度目は全体を楽しんで、2度目以降は「次は動物の歩き方、走り方に注目しよう!」「次は細かい背景に注目しよう!」と言った具合に何度も楽しめます。

あとは映画内のあちこちに散りばめられた動物ギャグや過去の映画のパロディ・オマージュの数々です。これは大人ほど楽しめるかも知れません。個人的にオススメは免許センターで働くナマケモノのギャグと『アナと雪の女王』『ゴッドファーザー』のオマージュです。この感じは近年のディズニー映画ではわりとある方なのですが、それらの中でも『ズートピア』は群を抜いて攻めています。マフィア映画の『ゴッドファーザー』のオマージュは、元の映画を知っていなくでも楽しめるギャグであり、それでいてストーリー的にも重要なシーンでもあります。

 

『ズートピア』に込められたメッセージ

近年のディズニー映画は、ストーリー(脚本)が秀逸で、なおかつ作品に込められたメッセージが本当に良いのです。この秘密については、後で触れています。

さて、この映画に込められたメッセージですが、

「誰の中にも差別意識や偏見はあるもの。ただ、それは自分と向き合い、様々な経験を経ることで、変えることができる。」「自分と他者の違いを認め、お互いに尊重し合うことで、個人はもとより世界全体がより豊かになる。」

ということでしょう。これって私たちの住む現実社会でも全く同じですよね。そして、一人ひとりのそういう意識や態度、行動が社会を、世界を変えていくということでしょう。

 

名作を連発する近年のディズニーアニメの秘密

ここからは余談です。近年、正確には2008年作品の『ボルト』という作品以降、ディズニー制作のアニメ映画はそのクオリティが圧倒的に高くなっています。それ以前は、過去の名作のテキトーな続編を乱発し、さらにそれらのクオリティが軒並み酷すぎるという状態で、完全に低迷していて、一時期はディズニーアニメスタジオが閉鎖直前までいっていました。しかし、『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』などの鬼クオリティの作品で有名なピクサーのトップ、ジョン・ラセターという天才アニメーターが2006年にディズニーアニメスタジオのトップに就任しました。そして、それまでの低レベルの作品の生産体制を一新し、ほぼ外れ作品のないピクサーと同じ方式で作品を作ることになります。その一発目が2008年の『ボルト』なのです。

さて、ピクサーの作品生産の方式とは?それは「ブレイントラスト」と呼ばれる会議によるストーリー(脚本)をブラッシュアップ作業です。「ブレイントラスト」とは、その作品の監督、プロデューサーだけでなく、今までに名作を数多く手がけてきた映画監督やスタッフが多数参加し、客観的に作品(試作段階)を評価し、遠慮をせずに意見を言い合う会議です。言うならば、天才がたくさん集まって意見を交換し合って、より良いストーリー(脚本)を作り上げるのです。さらに、アニメとしてのクオリティを上げるために実際に描く対象を徹底的にリサーチするのもピクサーと同じ方式です。今回のズートピアに際しても、制作陣は実際にアフリカに野生の動物を観に行ったり、動物園で飼育係の人に動物の特徴を聞いたりと、時間と手間をかけて行っており、それが作品中の登場動物の細かい動きや表情に大いに反映されています。

この方式を取り入れてからのディズニーアニメスタジオ制作の映画はピクサー並みにクオリティが高い作品ばかりです。有名なところだと『アナと雪の女王』『ベイマックス』『シュガーラッシュ』『塔の上のラプンツェル』などですね。どれも、ストーリーとメッセージが抜群に良い作品ばかりです。今後、またこれらのディズニー作品はここで取り上げたいと思います。

 

最後に

ということで、この『ズートピア』はアニメ作品として大傑作です。ほぼ非の打ちどころがないです。むしろアニメだからこそ、人間の現実社会を投影しつつ(このような手法をメタファーと言います。)、きっちり万人が楽しめる作品になっています。是非、楽しんでください。こちらもフォルテにはDVD/Blu-rayを置いておくので、観たいフォルテ生は上村まで声をかけてください。

今回はここまで。それでは、また。