こんにちは、フォルテの文系担当の上村です。
このシリーズでは、全小中学生にオススメの映画や小説などを紹介していきます。このシリーズで紹介するのは、私の考える「良い芸術作品」です。
ここでいう「良い芸術作品」とは、その作品に触れることで私たちが「何かしら成長できる」「何かを考えるきっかけを得られる」「何かしらを学べる」「モチベーションが高まる」作品を指しています。
優れた芸術作品(小説でも音楽でも絵画…etc)に触れることで私たちの人生は豊かになります。ここで紹介する良い芸術作品に触れることで少しでも子どもたちの人生が豊かになってくれればと思っています。
第十一弾となる今回は、映画『ドラえもん のび太とアニマル惑星(プラネット)』(1990年)です。
<参考記事>
第一弾:映画『ドリーム』(ココをクリック)
第二弾:映画『ズートピア』(ココをクリック)
第三弾:映画『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』(ココをクリック)
第四弾:映画『トイ・ストーリー4』(ココをクリック)
第五弾:映画『Us(アス)』(ココをクリック)
第六弾:映画『アルプススタンドのはしの方』(ココをクリック)
第七弾:映画『ミッション:8ミニッツ』(ココをクリック)
第八弾:映画『gifte/ギフテッド』(ココをクリック)
第九弾:映画『あの夏のルカ』(ココをクリック)
第十弾:映画『フリー・ガイ』(ココをクリック)
目次
映画『ドラえもん のび太とアニマル惑星』とは?
この作品は、いわゆるドラえもんの第一期(大山のぶ代を始めとする旧声優陣の頃の作品)の映画シリーズの11作目にあたる1990年の作品です。
取り上げているテーマが、「人間による環境破壊」「行き過ぎた人間文明への警鐘」などと言ったもので、かなり社会派な内容となっています。
また、物語のメインの舞台になっているアニマル惑星(プラネット)の近くにある地獄星は核戦争によって荒廃した星という設定になっています。
他のドラえもんの映画版作品では、このような重いテーマを扱うにしても、もう少しさりげなく盛り込むようにしていますが、この作品はテーマの打ち出し方が大胆過ぎて、正直説教臭いです。
というのも映画内では、のび太の通う学校の裏庭にゴルフ場が建設されるという話が持ち上がり、それを機会に環境問題について急に勉強し始めたのび太のママが、のび太やドラえもんに対して資源の無駄遣いを説教する場面が唐突に入ります。ここだけは、それまでの明らかにトーンが異なり、流れる映像や音楽も少しシリアスです。
この演出に関しては、原作者で今作の脚本も担当している藤子・F・不二雄さん自身もコミック版のあとがきで「少し露骨だったかもしれない」と語っているほどです。ちなみに私はこのあとがきを見たくて、アマゾンで注文したのですが、それが新装版だったらしく、藤子・F・不二雄さんによるあとがきは載っていませんでした…(なんでカットした!涙)。
ただし、そういった少々説教臭い部分に目をつむれば、とても魅力的な作品で、実際に今作は当時のドラえもんの映画シリーズの中では前年の『ドラえもん のび太の日本誕生』(←これも名作!)に次ぐ歴代2位のヒット作品となりました。
あらすじ(テレビ朝日のHPより)
ある晩、のび太はピンクのもやを見つける。その中を入っていくと、2本足で人間のように暮らす動物たちがいた。さっそくしずかとドラえもんを連れて夢の正体を探りに行くことに…。
再びピンクのもやの中へ入った3人は、チッポという犬の少年に出会い、町を案内してもらう。
そこはいろいろな動物たちが、公害のない文明の中で平和に暮らしているアニマル惑星だったのだ。
さらにチッポたちの先祖たちは昔は月に住んでいて、悪魔ニムゲにいじめられたために、星の船でやってきた神様に、光の階段でこの星に導かれたのだという。光の階段は、どこでもドアみたいなあのピンクのもやのことじゃないか?それが偶然地球につながったんじゃないかな?」とドラえもんは思いつく。
ピンクのもやを通っていったん地球にもどったみんなは、すぐにチッポからSOSのメッセージを受け取る。宇宙救命ボートでさっそく動物の国へ行ったが、もうすでにニムゲの軍隊にあとかたもなく破壊されていた。
ニムゲはこの美しいアニマル惑星を征服しようとしているのだ。運がよくなるツキの月を飲み込んだのび太はチッポのいとこのロミを助け出すが、ニムゲの軍隊はどんどん増えてきて、ひみつ道具だけでは戦えそうにない!果たしてドラえもんたちはアニマル惑星を救うことができるのか?
映画『ドラえもん のび太とアニマル惑星』の見どころは?
見どころ1「理想の惑星・アニマル惑星」
今回、物語のメインは動物が独自の進化を遂げている惑星・アニマル惑星です。このアニマル惑星は、藤子・F・不二雄さんの考える理想が描かれているように思います。
発電には、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが主に使われていて、高度な汚水処理装置、水と光と空気から食べ物を製造する技術などが発達しています。これらをドラえもんは「22世紀の地球よりも科学技術が発達している」と言います。
また、アニマル惑星には国という概念がなく、動物たちがそれぞれを尊重し合って過ごしていて、動物たちの信じる神話的な経典によって兵器の開発の開発が禁止されているので戦争がなく平和が保たれています。
また、まさに今日的なテーマといえる「多様性」に関しても感じ取れます。メインの登場人物のチッポという犬少年は、のび太やドラえもんが見た目的にアニマル惑星の動物ではないことを知りながらも、積極的に友達になろうとします。
見どころ2「映画的演出と遊び心」
今作には映画的といえる良い演出がいくつかあります。例えば、のび太がアニマル惑星から持ち帰った星の花(←アニマル惑星にしか生えていない植物)がある日枯れていることにのび太は気づきます。それは、その直後に平和だったアニマル惑星が異星人に襲われる展開を暗示しています。
この他、まさに藤子・F・不二雄的と言える遊び心もこの作品の大きな魅力です。動物の世界が舞台ということで、「迷子の子猫を助ける犬のおまわりさん」や「黒ヤギさんの手紙を食べてしまった白ヤギ」などの有名な童謡を模した場面や、ドラえもんに関するしつこいほどのタヌキネタなどがあります(最終的にドラえもんが「タヌキさんでいいよ…。」と妥協する流れは珍しいですが)。
(多少ネタバレ有)映画『ドラえもん のび太とアニマル惑星』のメッセージは?
すでに述べた通り、この作品の持つ「人間による環境破壊」「行き過ぎた科学技術への警鐘」などのテーマはかなり露骨で説教臭い内容です。むしろ露骨すぎて物語進行とのバランスがちょっと悪いと感じるくらいです。
ちなみに同じようなテーマを扱いながら、そのへんのバランスにかなり気を遣った作品が1992年の『ドラえもん のび太と雲の王国』だと思います。こちらは私個人的にはドラえもんの大長編では最も好きな作品の一つです。
のび太たちはアニマル惑星から地球に戻るときの別れ際に「愚かな人間たちも少しずつ意識や行動を変えていき、地球が少しでもアニマル惑星のような星に近づけるように頑張っていこう」と思い立ちます。
そして、地球に戻った後にのび太たちは、のび太のママが近隣住民たち一緒に参加したゴルフ場建設に対する反対運動が実を結び、計画が白紙になったことを知ります。
ここから感じられるメッセージとしては、「人間、何かを学ぶのに遅すぎることはない」「たとえ小さな行動でもそれが積み重なったり、広がることで大きな成果をもたらす」ということでしょう。
もう30年も前の作品ですから、ところどころに時代を感じさせるようなセリフや描写も多いですが、一方で残念ながら(?)現代にも通じる部分も多い作品と言えます。
今なら、ドラえもんの過去の大長編がすべてアマゾンプライムビデオで見られるので、ぜひどうぞ!
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