こんにちは、フォルテの文系担当の上村です。
このシリーズでは、全小中学生にオススメの映画や小説などを紹介していきます。このシリーズで紹介するのは、私の考える「良い芸術作品」です。
ここでいう「良い芸術作品」とは、その作品に触れることで私たちが「何かしら成長できる」「何かを考えるきっかけを得られる」「何かしらを学べる」「モチベーションが高まる」作品を指しています。
優れた芸術作品(小説でも音楽でも絵画…etc)に触れることで私たちの人生は豊かになります。ここで紹介する良い芸術作品に触れることで少しでも子どもたちの人生が豊かになってくれればと思っています。
第十二弾となる今回は、映画『ロスバンド』(2022年)です。
<参考記事>
第一弾:映画『ドリーム』(ココをクリック)
第二弾:映画『ズートピア』(ココをクリック)
第三弾:映画『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』(ココをクリック)
第四弾:映画『トイ・ストーリー4』(ココをクリック)
第五弾:映画『Us(アス)』(ココをクリック)
第六弾:映画『アルプススタンドのはしの方』(ココをクリック)
第七弾:映画『ミッション:8ミニッツ』(ココをクリック)
第八弾:映画『gifte/ギフテッド』(ココをクリック)
第九弾:映画『あの夏のルカ』(ココをクリック)
第十弾:映画『フリー・ガイ』(ココをクリック)
第十一弾:映画『ドラえもん のび太とアニマル惑星』(ココをクリック)
映画『ロスバンド』とは?
『ロスバンド』は、それぞれが悩みを抱える4名の少年・少女が主人公にしたノルウェー発の青春映画です。タイトルの通り、主人公たちはロックバンドとしてノルウェーロック大会の決勝に出場するために、地元から遠く離れた町・トロムソにキャンピングカーで向かう、いわゆるロードムービーです。
ノルウェー本国では2018年に公開されたようですが、日本では今年の2月に公開され、その際に文部科学省選定作品になっているだけあって、老若男女問わず全方位的におススメできる心温まる作品だと思います。
あらすじ(公式HPより)
ドラム担当のグリムと、親友でギター兼ボーカルのアクセルはノルウェーのロック大会に出るために練習に励む毎日。グリムはアクセルの音痴が気になってしかたがない。真実を言い出せないまま、念願の大会出場のチケットを手に入れたものの、ベースもいなければ、開催地は遥か北の果ての町・トロムソ。ベーシストのオーディションにやってきた9歳のチェロ少女のティルダを仲間に入れて「ロスバンド」を結成し、近所に住む名ドライバーのマッティンの運転で長旅のドライブに出かけるが……。果たして4人はトロムソに無事たどり着いて、ロック大会で演奏することができるのか。
魅力的な主人公4人
この映画では、それぞれに別々の悩みを抱える4人の少年・少女が主人公です。彼ら・彼女らがみんな魅力的で、それがこの映画の素晴らしい点の1つです。
1人目は、両親の不仲に悩んでいる、バンド「ロスバンド・イモターレ」のドラム担当のグリム。小さいころに初めて両親と行ったライブの際に、当時のノルウェーで最高のドラマーと写真を撮ってもらい、「夢を追い続けろ(Follow your dream)!」というメッセージをもらって以来、バンドのドラマーとして相棒のアクセルと一緒にノルウェー・ロック大会への出場を目指して頑張ってきました。この健気な彼の姿は良いです。
2人目は、恋に悩んでいる、バンド「ロスバンド・イモターレ」のギター兼ボーカル担当のアクセル。学校のアイドル的存在のリンダに恋をしているが、全く自分に振り向いてもらえず、かなりこじらせています。また、グリムの相棒でギターの腕前はピカイチですが、歌が致命的に下手クソで本人はそのことに気が付いておらず、グリムもそれを指摘できずにいました。ちなみにデモテープを作る際には、グリムが音楽ソフトでアクセルの歌の音程を補正していました。個人的に感心したのは、このアクセルが最初に出てきてグリムと会話をする場面で、セリフの言い回しを聞いた時点で「あ、コイツは確実に歌が下手だな。」と観客にわかるところです。
3人目は、家では両親に放っておかれていて、学校でも友達が1人もいない、9歳のティルダ。そんな日常から抜け出すために「ロスバンド・イモターレ」のベーシストオーディションに参加し、唯一の参加者であったがチェロの腕前は相当なものだったため合格し、バンド入りする。個人的には、この映画で最も魅力的な役が、このティルダです。年齢の割にませた感じの役ですが、時折見せる年齢相応の表情が素敵です。また、バンドのメンバーと時間を共にするうちに、「自分の居場所はここなんだ」と気づくところも良いです。
4人目は、父親が経営する板金屋さんで働きつつ、父親にラリードライバーとしての指導を受けているマッティン。実はマッティンは、この春にロンドンの音楽専門学校に合格していて、本当はそこに通って音楽の道に進みたがっていましたが、「音楽で食えるはずがない」という父親の鶴の一声で、進学を断念していました。父親の前では「音楽を諦めた」と言っているものの、彼の心には音楽への強い思いがまだあったのでした。ロスバンドには、会場までバンドメンバーを連れて行くキャンピングカーの運転手として参加します。バンドメンバーの兄貴分的な存在で、事あるごとに他のメンバーを気づかうナイスガイです。
劇中の音楽とノルウェーの風景が良い。
音楽映画ということで、劇中に流れる曲がどれも良いです。メインテーマやバンドが大会で演奏する歌もそうですし、キャンピングカーで会場に向かう道中に流れる歌も素晴らしいです。私は鑑賞後にパンフレットやYou Tubeを駆使して曲名やアーティスト名を調べて、数曲ダウンロードしました。
また、この映画はノルウェーを南から北へ縦断するロードムービーということで、様々なノルウェーの風景が印象的に映ります。ノルウェーに対する知識がない中でも、その雄大さや美しさには圧倒されます。
青春映画としての良さ
この『ロスバンド』は主人公4人の成長を描いた青春映画として傑作です。この映画では、彼ら・彼女らの人生を決定的に変えるような大きな出来事は起きませんし、ストーリー自体に大きなひねりやどんでん返しはありません。それこそ、彼ら・彼女らがキャンピングカーでノルウェーロック大会の会場となる町を目指しているように、映画として(これはいい意味で)物語のゴールは予め決まっているような作品ともいえます(だからそこ安心して見られる良さはあるでしょう)。これは映画として大きな起伏がないと言うだけであって、つまらないということでは決してなく、映画の中で愛おしく思えるシーンは本当にたくさんあります。
ただし、その道中において、それぞれ悩みを抱えていた4人が、時に壁にぶつかり、時に仲間に支えられながら、自分の進むべき道を決めます。このストレートでわかりやすいストーリー展開も、青春映画として良いところだと思うし、だからこそ見終わった後の爽快感を覚えるのかもしれません。
また映画を見終わった後に「またアイツら(=4人のメンバー)に会いたいな」と心から思えます。個人的にこう思えるかどうかは、青春映画というジャンルの中では、それが良い作品か否かを分ける大きなポイントだと思います。
映画『ロスバンド』のメッセージとは?
この映画は、「自分の道は自分で決めろ。」「好きなことをとことん突きつめろ。」ということです。これは、ノルウェーロック大会でロスバンド・イモターレが演奏する曲名が「Walk Your Own Way(=自分自身の道を歩め)」であることからも明らかです。
このような「好き」を突きつめることの大切さがメッセージの作品と言えば、同じく今年公開された さかなクン の半自伝映画である「さかなのこ」も同じですね(「さかなのこ」では、その危うさも同時に提示していましたが)。
映画『ロスバンド』は現在、黄金町近くの映画館・シネマジャック&ベティで10月21日(金)まで公開中です。できれば劇場で見てほしいですが、今年の年末や来年の始めにはブルーレイやDVDなどのソフト販売、または各種サイトで配信もされると思います。なので、是非ご覧ください。
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