人生を豊かにする芸術作品⑬『線は、僕を描く』

こんにちは、フォルテの文系担当の上村です。

このシリーズでは、全小中学生にオススメの映画や小説などを紹介していきます。このシリーズで紹介するのは、私の考える「良い芸術作品」です。

ここでいう「良い芸術作品」とは、その作品に触れることで私たちが「何かしら成長できる」「何かを考えるきっかけを得られる」「何かしらを学べる」「モチベーションが高まる」作品を指しています。

優れた芸術作品(小説でも音楽でも絵画…etc)に触れることで私たちの人生は豊かになります。ここで紹介する良い芸術作品に触れることで少しでも子どもたちの人生が豊かになってくれればと思っています。

 

第十三弾となる今回は、映画『線は、僕を描く』(2022年)です。

<参考記事>
第一弾:映画『ドリーム』(ココをクリック)
第二弾:映画『ズートピア』(ココをクリック)
第三弾:映画『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』(ココをクリック)
第四弾:映画『トイ・ストーリー4』(ココをクリック)
第五弾:映画『Us(アス)』(ココをクリック)
第六弾:映画『アルプススタンドのはしの方』(ココをクリック)
第七弾:映画『ミッション:8ミニッツ』(ココをクリック)
第八弾:映画『gifte/ギフテッド』(ココをクリック)
第九弾:映画『あの夏のルカ』(ココをクリック)
第十弾:映画『フリー・ガイ』(ココをクリック)
第十一弾:映画『ドラえもん のび太とアニマル惑星』(ココをクリック)
第十二弾:映画『ロスバンド』(ココをクリック)

 

映画『線は、僕を描く』とは?

映画『線は、僕を描く』は、水墨画を題材にした砥上裕將による同名小説の映画化で、製作は青春映画の大傑作である『ちはやふる』シリーズの小泉徳宏監督を始めとするスタッフが再集結して担当しています。

私個人的には、原作小説の存在は知りませんでしたが、とにかく映画『ちはやふる』シリーズが大好きで、今回この映画を見ようと思ったのも、『ちはやふる』シリーズの監督や製作陣による映画だったという部分が大きいです。

そして、今作も『ちはやふる』同様、個人的に大好きな映画でした。

 

あらすじ(公式サイトより)

大学生の青山霜介はアルバイト先の絵画展設営現場で運命の出会いを果たす。白と黒だけで表現された【水墨画】が霜介の前に色鮮やかに拡がる。深い悲しみに包まれていた霜介の世界が、変わる。
巨匠・篠田湖山に声をかけられ【水墨画】を学び始める霜介。【水墨画】は筆先から生み出す「線」のみで描かれる芸術。描くのは「命」。霜介は初めての【水墨画】に戸惑いながらもその世界に魅了されていく――。

 

映画『線は、僕を描く』の見どころ

圧巻の水墨画シーン

まずは、何よりも登場人物たちが水墨画を描くシーンが格好良く描かれているところです。『ちはやふる』でもカルタの試合シーンがとても格好良く描かれていましたが、今作の水墨画のシーンも素晴らしいです。共通して言えることは映像と音楽がバッチリ嚙み合っていて、見ていて心躍るような体験ができることです。ちなみに主演の横浜流星はこの映画のために1年以上水墨画を特訓して、撮影に臨んだとのことです。また、パンフレットを読むと、他の役者さんたちもかなりの量練習したようで、その一部の作品が劇中にも多く使われているようです。

映画内でも水墨画のド素人である主人公が、水墨画を始めてから圧倒的な努力を重ねる描写がありました。特に素人の主人公が何かに打ち込むストーリーの場合、こういったシーンがあると、その後の主人公の才能の開花ぶりにも説得力が出るので、非常に良かったです。

さらに、『ちはやふる』では、カルタの試合中に主人公チームのメンバーの動き(上の句が読まれる寸前に一斉に腰上げる動き)に一体感があって、それが見ていて心地よかったです。そして、この映画内でも登場人物たちが水墨画を書き始める際に目をつむって息を整えるという特有の動作があり、それは見ていて心地よさを覚えます(ストーリー的にも主人公がその動作をすることで、師匠と真の師弟関係になったことがわかる)。

 

魅力的な登場人物

メインの登場人物4人はみんな良いです。

主人公の霜介(横浜流星)。実は過去に大きなトラウマを抱えており、いまだにそれを引きずっていて、何事にも前向きに取り組むことが出来ずにいました。しかし、そんなある日に運命的に水墨画に出会い、その魅力にどんどん引き込まれます。また、彼が過去のトラウマに向き合って克服することがこの映画のストーリー的には大きなテーマになっています。

 

霜介の師匠であり、水墨画の巨匠である篠田湖山(三浦友和)。霜介を一目見て、彼の中にある可能性を感じて弟子に誘います。決して口数が多いキャラクターではないですが、彼の一言一言には温かみがあり、映画の後半での彼のセリフには何度も泣かされました。

 

湖山の孫であり、新進気鋭の水墨画家の篠田千瑛(清原果那)。自分自身が湖山から水墨画を満足に教えてもらえない中で、急に湖山の弟子となった霜介に対して、嫉妬心に近いライバル心を抱きます。彼女は、去年の賞コンテストで審査員から酷評されて以来、納得のいく水墨画が描けず、完全にスランプに陥っていました。そんな中、霜介との出会いをきっかけに、「自分らしい線」とは何かということに向き合います。

 

湖山の一番弟子であり、霜介や千瑛たちの兄貴分的な存在の西濱湖峰(江口洋介)。普段は湖山の家で身のまわりの世話などをしていますが、一番弟子というだけあって水墨画に造詣が深いです。性格的に荒々しい部分がありますが、根は優しくて、霜介や千瑛を様々な面でサポートしています。個人的には、この西濱湖峰が一番好きなキャラクターです。はっきり言って江口洋介のベストアクトだと思います!

 

他にも、主人公・霜介の大学の同級生である古前と川岸や、元々は湖山に並ぶ巨匠で今は水墨画評論家の女性・翠山もなかなか良いキャラクターです。

 

良いセリフ

劇中に良いセリフがたくさんあります。特に主人公・霜介に対するセリフは、霜介に感情移入して見ている我々に投げかけられていると思えるので、よりエモーショナルに感じます。以下、印象的なセリフです。

「できるかできないかじゃない。やるかやらないかだよ」(湖山)

「何かになるんじゃなくて、何かに変わっていくもんかもね」(湖峰)

「そろそろ前に進むときだろ」(古前)

余談ですが、↑の湖山のセリフは、私が会社員時代の新人のときに当時の上司に全く同じセリフを言われたのを思い出して、ドキッとしました。

 

テーマとメッセージ

先にも述べた通り、「過去のトラウマを克服して、未来に向けて新たな一歩を踏み出すこと」です。その中で、「生と死」が大きなテーマとして掲げられています。それは、霜介の過去のトラウマ、登場人物の一人の身に起こることのほか、食料の調達の仕方や食事の場面での登場人物たちの動作などでもこのテーマを連想させるシーンが多くあります。食の裏側には命があるということです。

 

画面作り

とにかく光を上手く使った画面作りが印象的です。本当に音楽と光の使い方が素晴らしい映画だなと見ていてずっと感心していました。

また、劇場で2回目に見たときには、画面の中の色に注目すると青やネイビーを基調とした画面作りが徹底されていることに気づきました。何気ない小道具や登場人物たちの服装など、至るところに青・ネイビーが使われていました。もし二度目以降に見返す場合は注目してみてください。

 

(多少ネタバレあり)主人公たちの成長

タイトルにもある通り、技術云々とは別に水墨画の線はその人自身を表しています。そして、その人らしさが感じられる線こそ「良い線」なのです。逆に言うと、人を真似て描いたのでは「良い線」ではないし(劇中では「悪くはない」と表現されています。)、心の中に迷いのある人が描く線にはやはり迷いがあります。

霜介は過去のトラウマと向き合うこと、千瑛は身近な人の生死を目の前にすることで、自分自身と向き合い、心の中の迷いをなくしていきます。それによって、二人は「良い線」の水墨画を描くことができるようになります。

また、主人公が過去のトラウマを乗り越えるときに、場面としては時間帯が夜から朝になります。つまり、過去のトラウマによって立ち止まっていた主人公にも夜明けが訪れて、そこからまた前に進みだすことができるということを示しています。

映画『ちはやふる』シリーズ同様、この映画も超絶オススメです!

パンフレットも良かったです!

今回は以上です。ではまた。

 

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