こんにちは、フォルテの文系担当の上村です。
このシリーズでは、全小中学生にオススメの映画や小説などを紹介していきます。このシリーズで紹介するのは、私の考える「良い芸術作品」です。
ここでいう「良い芸術作品」とは、その作品に触れることで私たちが「何かしら成長できる」「何かを考えるきっかけを得られる」「何かしらを学べる」「モチベーションが高まる」作品を指しています。
優れた芸術作品(小説でも音楽でも絵画…etc)に触れることで私たちの人生は豊かになります。ここで紹介する良い芸術作品に触れることで少しでも子どもたちの人生が豊かになってくれればと思っています。
第十四弾となる今回は、映画『さかなのこ』(2022年)です。
<参考記事>
第一弾:映画『ドリーム』(ココをクリック)
第二弾:映画『ズートピア』(ココをクリック)
第三弾:映画『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』(ココをクリック)
第四弾:映画『トイ・ストーリー4』(ココをクリック)
第五弾:映画『Us(アス)』(ココをクリック)
第六弾:映画『アルプススタンドのはしの方』(ココをクリック)
第七弾:映画『ミッション:8ミニッツ』(ココをクリック)
第八弾:映画『gifte/ギフテッド』(ココをクリック)
第九弾:映画『あの夏のルカ』(ココをクリック)
第十弾:映画『フリー・ガイ』(ココをクリック)
第十一弾:映画『ドラえもん のび太とアニマル惑星』(ココをクリック)
第十二弾:映画『ロスバンド』(ココをクリック)
第十三弾:映画『線は、僕を描く』(ココをクリック)
映画『さかなのこ』とは?
映画『さかなのこ』は、誰もが知る「魚博士」の さかなクン の自伝『さかなクンの一魚一会~毎日夢中な人生!~』の映画化です。私個人は、原作の自伝を読んでいませんので、近いうちに拝読したいと思います。
監督は『横道世之介』『南極料理人』などの映画で知られる沖田修一です。個人的にはあまりこの監督の映画を見ていないのですが、2020年の映画『子供はわかってあげない』は劇場で観ていて大好きでした。この映画でも『子供はわかってあげない』と共通する良さが多くありました。
また、さかなクンと言えば、この映画でも描かれている通り、日本で初めてカブトガニの人工繁殖に成功したこと(しかも中学生時代に!)や、中学1年生の国語の教科書に掲載されている『幻の魚は生きていた』で取り扱われている(それまで絶滅したとされていた)クニマスの生息確認にも貢献するなど、研究者・学者の面での功績も本当に素晴らしいわけですね。
あらすじ(公式サイトより)
お魚が大好きな小学生・ミー坊は、寝ても覚めてもお魚のことばかり。他の子供と少し違うことを心配する父親とは対照的に、信じて応援し続ける母親に背中を押されながらミー坊はのびのびと大きくなった。高校生になり相変わらずお魚に夢中のミー坊は、まるで何かの主人公のようにいつの間にかみんなの中心にいたが、卒業後は、お魚の仕事をしたくてもなかなかうまくいかず悩んでいた…。そんな時もお魚への「好き」を貫き続けるミー坊は、たくさんの出会いと優しさに導かれ、ミー坊だけの道へ飛び込んでゆくーー。
映画『さかなのこ』の見どころ
魅力的な登場人物
主人公のミー坊(のん)。まずこの作品の一番の成功ポイントは、何と言っても主人公のミー坊に のん をキャスティングしたことです。ミー坊は男の子ですが、それを女優の のん が演じています。公開前の予告を見た時点で、「これがあったか!」とハマり役に感じましたが、この透明感や中性的な存在感は唯一無二で、今や のん 以外が演じる姿は想像できないほどです。
ミー坊の母・ミチコ(井川遥)。ミー坊にとっての最大の理解者です。ミー坊の他の子との明らかに違うところを心配する父親とは対照的に、それを1つの個性としてまさに全肯定してくれる存在です。ミー坊の成長する姿をミチコが温かい目で見つめるシーンがいくつかありますが、「お母さん、良かったですね。あなたの育て方は間違ってなかったですね。」という思いがこみ上げてきて泣けます。
ミー坊の小学校時代の同級生であるヒヨ(柳楽優弥)。小学校時代はミー坊と仲良しでしたが、高校生になるとミー坊と違う高校に通い、「狂犬」と呼ばれる不良になっていました。ただ、それでもミー坊の良き理解者です。個人的にこのヒヨとミー坊の友情が示されるシーンに何度も胸が熱くなりました。不良から足を洗って、自分の将来のために頑張る姿も素敵です。
ミー坊の小学校時代の同級生であるモモコ(夏帆)。高校卒業後は、シングルマザーとして娘を育てることになり、ミー坊の一人暮らしのアパートに転がり込みます。ミー坊との間では不思議な友人関係を築いており、ミー坊が「好き」を貫く姿に大きな影響を受けます。
ミー坊の通う高校の不良のリーダー的存在である総長(磯村勇斗)。不良の一方で、バカっぽい一面や優しい一面も見えます。また、漁師を祖父に持っていることもあってか、魚に対して物すごい知識と熱量を持つミー坊に対しては、一定のリスペクトを持って接しています。
総長と敵対する高校(=ヒヨの通う高校)の不良のリーダー的存在である籾山(岡山天音)。ミー坊との出会いが彼の人生を大きく変えることになり、それがミー坊にとっても大きな転機になります。
ミー坊の小学生時代に、近所に住んでいたギョギョおじさん(さかなクン)。魚に異様に詳しい無職の男性で、周囲からは完全に変質者扱いされています。ただ、このキャラクターは、ミー坊(=さかなクン)が一歩間違えたらありえたかもしれない人生の1つであり、この映画の大きなメッセージである「好きを貫くこと」の危うさを示す存在でもあります。
ミー坊の高校の鈴木先生(鈴木拓)。この役を演じる、お笑い芸人・ドランクドラゴンの鈴木拓は実際にさかなクンの中学・高校の同級生とのことです。今回の高校のシーンの撮影も二人の母校(神奈川県立綾瀬西高校)で行われたとのことです。
この他、ミー坊やヒヨやモモコの小学生時代を演じた子役たちも全員良かったです。
テーマとメッセージ
沖田修一監督がこの映画を作るうえで、大切にしたスローガンは「男か女かはどっちでもいい」で、この言葉は映画の冒頭に出てきます。これによってミー坊役を のん が演じていることにも一気に説得力が出ます。
また、映画の持つ最も大きなメッセージは「好きなことを貫き通すこと」の大切さです。そして、その中で「他人に認められることで自己肯定感が高められる」ということだと思います。
劇中では、ミー坊の魚に対する「好き」という圧倒的なエネルギーが周囲を巻き込んでいきます。この映画は大きく分けて小学生時代・高校生時代・青年時代の3つのパートに分かれており、それぞれでミー坊を認め、支えてくれる人々がいます。彼らの存在があるからこそ、ミー坊は自己肯定感が高められ、「好き」を貫き通すことができて、成功へとつながるのです。
「好きに勝るものなしでギョざいます!」(by ミー坊)
数々の笑えるシーン
私が2020年に見た同じ沖田修一監督作品『子供はわかってあげない』同様、コメディタッチで笑えるシーンがたくさんあります。父親とタコのシーン、ミー坊が不良のナイフを使って魚をさばくシーン、映画終盤での母親によるまさかの告白は特に個人的にお気に入りです。
パンフレットが良い
『さかなのこ』のパンフレットがまた良いです!メインキャストの俳優さんたちのインタビュー、監督インタビュー、監督とさかなクンの対談、劇中に出てくる魚の図鑑(!)、劇中に出 てくるさまざまな資料の画像など、ボリュームがあります。
この映画が好きな人にとっては、かゆい所に手が届く内容になっていて、マストアイテムです。
ということで、映画『さかなのこ』は老若男女問わず楽しめる大傑作で、何か好きなことに打ち込んでいる人の背中を押してくれる作品です!超オススメです。
今回は以上です。ではまた。
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